Theコインロッカーズ⑸

 忙しい仕事の合間を縫って、奈桜実さんが会いに来てくれました。教師冥利に尽きる瞬間です。とても嬉しい。ありがとう。「また顔だけでも、ちょっと見せに来てね」と話しても、実際来てくれる教え子など、まずいませんから。

 彼女と少しでも話ができて本当に良かった。彼女は「東京は刺激が多すぎる」と言っていましたが、東京から長野に舞い戻って来た私にも、その気持ちが少しは分かります。周りを見て、自分もそうしなければならない、こんな自分ではダメだという思いが常にあって、何となく疲れていたことを思い出しました。自分を見失わず、この自分でいいんだと言えることはたいへんなことです。この先、奈桜実さんがどんな奈桜実さんであっても、その時そのままの彼女を私は応援していきます。

 一人身の田舎暮らしでは、楽しいことなど何も無いので、また彼女に会える日を楽しみに励みに、私も頑張って生きていこうと思います。